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海外アクセラレーターの出資条件|YCとTechstarsの金額と持分

Y Combinatorの500,000ドルとTechstarsの220,000ドルは、どこまでが契約時に確定し、どこからが後で決まるのか。両社の公式ページの記載だけで出資額・持分・転換条件を整理し、日本の会社が先に確かめる前提もまとめます。

海外アクセラレーターの出資条件|YCとTechstarsの金額と持分 - 株式会社セイビー

海外のアクセラレーターの募集ページには、投資額と持分の数字が並んでいます。Y Combinator(以下YC)は500,000ドルで7%、Techstarsは220,000ドルで5%。数字だけを見ると、金額を株式で買っている単純な取引に見えます。

ところが両社の公式ページを読むと、この2つの組み合わせは同じ意味を持っていません。YCの500,000ドルのうち、7%と結びついているのは125,000ドルだけです。残りの375,000ドルは、参加したあとに創業者が他の投資家と結んだ契約の条件に合わせて、持分が決まります。Techstarsの5%も、220,000ドル全体と引き換えの数字ではありません。

この記事では、両社が公式ページに書いている範囲だけを使って、次の3点を整理します。いくら出るのか。どこまでが契約した時点で確定するのか。そして、日本の会社が応募の前に確かめておく前提は何か。金額は公表されている通貨(米ドル)の表記のまま書き、日本円へは換算していません。為替と条件で変わるためです。確認日は2026年9月3日です。

いくら出して何パーセントか、だけでは条件を読んだことにならない

アクセラレーターの条件を比べるとき、いちばん目に入るのは投資額と持分の組み合わせです。しかし、その2つを並べただけでは比較になりません。理由は単純で、持分が決まる時点が契約ごとに違うからです。

投資契約には、署名した時点で持分が確定するものと、あとの資金調達の条件が固まってから持分が確定するものがあります。前者は、渡すものが最初から見えています。後者は、渡す量が将来の出来事に左右されます。同じ「出資」という言葉で語られていても、創業者が引き受けている不確実性の量はまるで違います。

YCとTechstarsは、どちらも1つのディールの中にこの2種類を混ぜています。だから「500,000ドルで7%」「220,000ドルで5%」という要約は、条件の半分しか伝えていません。残りの半分は、いつ、何を基準に持分が決まるのかという部分にあります。

日本の会社にとっては、もう1つ先に効く条件があります。参加するために会社をどこに置くか、そして創業者がどこにいるかという前提です。これは持分の交渉ではなく、応募の前段階の話なので、記事の後半で扱います。以下ではまず、公表されている記載に沿って、確定する部分とあとで決まる部分を分けて読んでいきます。

Y Combinatorの標準ディールは、2本の契約に分かれている

YCが公式ページ「The YC Deal」で公表している標準ディールは、500,000ドルです。ただし1本の契約ではなく、SAFEと呼ばれる投資契約書が2本に分かれています。SAFEは、将来の株式に転換することを約束して先に資金を渡す形式の契約で、YC自身が書式を公開しています。

1本目は125,000ドルで、post-money SAFEです。これが7%に対応します。公式ページは、この7%が固定であること、そしてマイルストーンの達成を条件にしていないことを明記しています。事業が計画どおりに進んだかどうかで、金額も持分も変わらないという意味です。

2本目は375,000ドルで、キャップ(評価額の上限)も割引も付かない「上限なしMFN SAFE」です。MFNはMost Favored Nation、日本語では最恵国待遇と訳される条項で、バッチ期間中に発行された最も低いキャップのSAFE、あるいはそれ以上に有利な条件に合わせて転換すると書かれています。つまり2本目の持分は、契約した時点では決まりません。

このほか、公式ページには次の記載があります。YCはその後の資金調達ラウンドに追加出資して持分を保てるプロラタの権利を持つこと。そして、YCに参加するために会社が支払う手数料はないことです。

Y Combinatorの500,000ドルが、7%が確定する125,000ドルのpost-money SAFEと、持分があとで決まる375,000ドルの上限なしMFN SAFEの2本に分かれる構造の図
YC公式ページの記載を、確定している部分とあとで決まる部分に分けて並べたものです。金額の合計は同じでも、持分が決まる時点が2本で違います。 出典:Y Combinator「The YC Deal」(確認日 2026-09-03)

2本を項目ごとに並べると、違いは金額ではなく「いつ決まるか」に集中していることが分かります。

項目 125,000ドルのSAFE 375,000ドルのSAFE
契約の種類 post-money SAFE 上限なしMFN SAFE
キャップ・割引 7%に対応する形で固定 キャップなし・割引なし
持分が決まる時点 契約した時点 バッチ期間中の他のSAFEの条件が決まったあと
公表されている持分 7% 記載なし。条件によって変わる
マイルストーン 連動しないと明記 連動しないと明記

出典:Y Combinator「The YC Deal」(確認日 2026-09-03)

Y Combinator公式ページ「The YC Deal」のファーストビュー
引用キャプチャY Combinatorの公式ページ「The YC Deal」。記事で扱っている出資額と、7%に対応する契約の内訳がここに記載されています。 出典:Y Combinator「The YC Deal」(公式ページ)(確認日 2026-09-03/表示のファーストビュー)

MFNは「あとで決まる」という約束

MFNは、他の投資家に出したいちばん有利な条件を、あとから自分にも適用してもらう取り決めです。YCの説明を工程の順に直すと、次のようになります。

上限なしMFN SAFEの持分が決まるまでの4工程。出資、バッチ期間中の他のSAFE、最も低いキャップへの追随、価格の付いたラウンドでの転換を順に示した図
YCの公式ページと契約書ページの記載を、時間の順に並べ直したものです。4段目の数字は、YCが公式ページに載せている計算例です。 出典:Y Combinator「The YC Deal」Y Combinator「Safe Financing Documents」(確認日 2026-09-03)

YCは公式ページで、この2本目がどう転換するかを具体的な数字で示しています。15,000,000ドルのポストマネー評価額のキャップでSAFEを発行した場合、375,000ドルのMFN SAFEは 375,000 ÷ 15,000,000 = 2.5% に転換するという例です。

ここで効いてくるのが、YCが公開しているSAFEの書式そのものです。契約書ページには、post-money SAFEのキャップは「SAFEで調達した資金をすべて含んだあと」の評価額であって、そのあとに入る株式による資金調達の金額までは含まない、と書かれています。同じページには、post-money SAFEでは売った持分が、投資額をキャップで割った値に等しくなるという説明もあります。上の計算例は、この考え方をそのまま数字にしたものです。

創業者の側から読むと、意味は2つあります。1つは、自分で集める資金のキャップが低いほど、YCの2本目が大きな持分に変わることです。よい条件で調達したかどうかが、そのままYCへ渡す量に跳ね返ります。もう1つは、post-money SAFEでは持分の計算が先に確定するため、そのあとに入ってくる投資家による希薄化を、既存の株主の側が引き受けることです。計算が単純になった代わりに、負担の位置がはっきりしました。

なお、YCの契約書ページで公開されているpost-money SAFEには、キャップ付きで割引なし、割引付きでキャップなし、キャップも割引もない上限なしMFNの3種類があり、プロラタのサイドレターが別に用意されています。標準ディールの2本目は、このうち3つ目にあたります。

Techstarsは2025年に投資条件を組み替えた

Techstarsは2025年4月17日の発表で、アクセラレーターの投資条件を変更したと公表しています。現在の条件は220,000ドルで、内訳は200,000ドルの上限なしMFN SAFEと、20,000ドルのポストマネー転換持分契約(CEA)です。このうち20,000ドルの側が、普通株式で5%に対応します。

構造はYCと似ています。持分が最初から決まっている小さい部分と、あとの条件に合わせて決まる大きい部分の組み合わせです。違うのは配分で、Techstarsは「あとで決まる」側の比率がより大きくなっています。発表は、この変更の狙いを、より多くの資金と、より単純で比較しやすい構造だと説明しています。

転換の引き金も公表されています。2本の契約は、100万ドル以上の価格の付いたラウンドで転換すると書かれています。あわせて、サイドレターでプロラタ、デジタル資産、ドラッグアロングの権利と、事業指標や資金の減り方についての株主への報告義務が定められています。

地域による違いもあります。アジア太平洋のプログラムでは、上限なしMFN SAFEが200,000ドルではなく100,000ドルです。同じ「Techstarsのアクセラレーター」という名前でも、参加する地域によって受け取る金額が変わります。プログラムは3か月で、メンター主導であると記載されています。

2社の公表値を同じ表に並べる

順位を付けるための表ではありません。数えている単位が違うので、金額の大小で優劣は決まりません。読む目的は、どこまでが確定していて、どこからが後決めかを、同じ物差しで見ることです。

項目 Y Combinator Techstars
公表されている投資額 500,000ドル 220,000ドル
持分が確定している部分 125,000ドルのpost-money SAFEで7% 20,000ドルのCEAで普通株式5%
あとで決まる部分 375,000ドルの上限なしMFN SAFE 200,000ドルの上限なしMFN SAFE
転換の引き金 価格の付いたラウンド。最低額の記載なし 100万ドル以上の価格の付いたラウンド
地域による差 参照したページに記載なし アジア太平洋は上限なしMFN SAFEが100,000ドル
プログラムの期間 3か月 3か月
会社が払う手数料 支払う手数料はないと明記 参照したページに記載なし

出典:Y Combinator「The YC Deal」「FAQ」、Techstars「New $220,000 Accelerator Investment Terms」(確認日 2026-09-03)

表にして見えるのは、両社とも投資額の大部分が「あとで決まる」側にあることです。YCは500,000ドルのうち375,000ドル、Techstarsは220,000ドルのうち200,000ドルがそちらに入っています。応募を検討するときに読み込むべきなのは、確定している7%や5%ではなく、後決めの部分がどんな条件で確定するのかという記述のほうです。

日本の会社が先に確かめる前提

持分の条件より先に効いてくる項目が、YCの公式FAQに書かれています。

会社をすでに米国・カナダ・シンガポール・ケイマン諸島以外の場所で設立している場合、YCに参加するには、この4つのいずれかに親会社を作る必要があります。日本法人だけを持っている会社にとっては、応募できるかどうかではなく、参加が決まったあとに必ず出てくる実務の前提です。逆に、会社をまだ設立していない場合は、設立前でも応募できるとFAQに書かれています。

もう1つは場所です。バッチはサンフランシスコで対面で行われ、3日間のリトリートで始まり、週次のミートアップがあると書かれています。3か月のプログラムが終わったあとはどこへ行ってもよい、とも書かれています。渡航と滞在をどう組むかは、応募の前に見積もっておく項目です。

会社をどこで設立しているかによって、YCへの参加準備が3つに分かれる分岐図。設立前、日本法人だけ、4つの国と地域のいずれかで設立済みの場合を示した図
YC公式FAQの記載を、設立地ごとの分岐として並べたものです。中央が、日本法人だけを持っている会社にあたります。 出典:Y Combinator「FAQ」(確認日 2026-09-03)

この2つは、資本政策ではなく段取りの話です。持分の条件には交渉の余地がありませんが、法人の形と滞在の計画は、準備の期間で吸収できます。順番として、金額の比較より先に確かめておくほうが安全です。

資金の集め方は、株式を渡すものだけではありません。当サイトでは、売上に連動して返済する資金調達を繰り返し使った米オレゴンの林業用品店の事例を紹介しています。契約が何を単位に数えているかという読み方は、AIエージェントの成果課金を扱った記事でも同じ形で使っています。海外の事業の動きは海外ビジネスにまとめています。

この記事で確認できなかったこと

正確を期すために、記載を確認できなかった項目を残します。

Techstarsが会社に手数料を求めるかどうかは、今回参照した投資条件のページと発表ページには記載がありませんでした。プログラムごとの採択数、応募の締切、日本からの参加実績についても、参照したページには記載がありません。YCの側も、バッチの開催回数と日程はFAQではなく応募ページを見るように案内されており、この記事では扱っていません。

500 GlobalとAntlerについても投資条件を探しましたが、参照した公式ページには金額と持分の記載がありませんでした。他のメディアが挙げている金額はいくつかありますが、一次情報で確認できていない数値は載せない方針です。

また、この記事はどちらのアクセラレーターが有利かを比べたものではありません。投資額と持分は条件の一部でしかなく、メンターとの接続、卒業後の資金調達、事業領域との相性を含めた結果は、公表された金額からは決まりません。自社が渡す持分と、その見返りに何を得るのかを並べて考えるところからが、本当の比較の始まりです。

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