毎週の会議で見る数字は決まっているのに、Googleアナリティクスを開くとレポートを行ったり来たりして、結局は表計算へ書き写す。この手順に、もう一つの選択肢が加わりました。Googleは2026年9月9日、アナリティクスの更新履歴にダッシュボードの提供を掲載しました。事業のKPIを一つのレポートで見るための、柔軟性の高い方法だという説明です。
先に、公式ヘルプに書かれている範囲の要点を並べます。ダッシュボードはグリッド状のキャンバスで、可視化を自分で置いて、大きさや位置を整えられます。使えるのはスコアカード、表、折れ線、棒(横・縦)、ドーナツ、ファネルの6種類です。カードの数は標準のプロパティで15枚まで、プレミアムのプロパティで30枚までと決まっています。作成と公開ができるのは編集者か管理者で、公開したダッシュボードはプロパティにアクセスできる全員が見られる状態になります。そしていまの時点では、APIでの取得、セグメント、カード単位の比較に対応していません。
この記事で扱うのは、Googleアナリティクスの公式ヘルプに記載がある範囲だけです。提供が始まる地域の順番、日本語の画面での名称、モバイルアプリでの表示については、確認できた範囲に記載がありませんでした。確認日は2026年9月14日です。
追加されたのは「一枚にまとめる」ための面
ヘルプの説明では、ダッシュボードは自分で作る可視化を通じて、アナリティクスのデータから実用的な示唆を素早く引き出すためのもので、それを一つのページにまとめたものだとされています。既存のレポートを置き換えるという書き方ではなく、見たいものを集める場所が増えた、という位置づけです。
チャートの種類は6つに絞られています。数値を大きく見せるスコアカード、明細を並べる表、推移を見る折れ線、内訳を比べる棒、構成比のドーナツ、離脱の段差を見るファネル。日付の比較を適用すると、スコアカードに増減率を出せる、という記載もあります。分析用の道具立てとしては多くありませんが、決まった数字を毎週見るという用途なら、この6つでおおむね足ります。
ここで注意したいのは、データの中身が増えたわけではないという点です。集計の定義も、取得できる指標も、これまでと同じものを並べ替えているだけです。新しい機能が出たときに「これまで測れなかったものが測れる」と読むと、期待が先に進みます。今回はあくまで、既にあるデータの見せ方の話です。
作成から公開までは同じ画面で終わる
手順はヘルプに一通り書かれています。レポートの画面から作成のメニューを開いてダッシュボードを選び、キャンバスに可視化をドラッグして置き、そこへディメンションと指標をドラッグして割り当てます。見た目の調整は右側のパネルで行い、保存してから公開すると、レポートの左のナビゲーションに追加されます。公開したあとも、左のナビゲーションから選んで編集のアイコンを押せば直せます。
作る手数そのものは軽く見えますが、実務で効いてくるのは4段階目と5段階目の間です。保存しただけの状態と、公開した状態が分かれています。つまり、作りかけを自分の手元に置いておくことと、全員へ出すことが、別々の操作になっています。この境目があるおかげで、試作と共有を分けて運用できます。
探索とは、そもそも役割が違う
すでにアナリティクスには探索があります。ヘルプでは、標準のレポートを超えた分析の手法をまとめたものと説明され、自由形式、コホート、ファネル、セグメントの重複、ユーザー、経路、ユーザーの生涯価値の7つの手法が挙げられています。作れる数にも上限があり、利用者ごとにプロパティあたり200件、共有するものはプロパティあたり500件までです。
権限の扱いも違います。探索は閲覧者の役割でも作成、編集、削除ができ、共有された探索はほかの利用者にとっては閲覧のみで、手を入れたい場合は複製することになります。一方のダッシュボードは、作成と公開に編集者か管理者が必要です。同じ「自分で作る画面」でも、誰が作れるかが違います。
三つ目の選択肢として、ライブラリから作るカスタムレポートがあります。こちらはプロパティごとに150件までという上限がヘルプに書かれています。権限のない利用者にはライブラリ自体が表示されません。
三者を並べると、住み分けは比較的はっきりしています。決まった数字を定点で見るならダッシュボード、その場で湧いた疑問を追うなら探索、標準レポートの並び自体を整えるならライブラリです。迷ったときは、その画面を来週も同じ形で見るかどうかを基準にすると分けやすくなります。
公開の範囲は、権限の設計がそのまま決める
役割ごとにできることは、権限のヘルプに整理されています。管理者はユーザーの管理まで含めてすべてを扱えます。編集者はプロパティの設定を扱えますが、ユーザーの管理はできません。閲覧者は設定とデータを見ることができ、レポートに表示するデータを変えることもできます。アナリストは、作成した探索をプロパティのほかの利用者へ共有できる役割として説明されています。
ここにダッシュボードを重ねると、実務上の分岐が二つ出てきます。一つは、作る側の話です。分析を担当している人が閲覧者の役割しか持っていない場合、その人はダッシュボードを作れません。探索なら作れていたので、役割の見直しが必要になることがあります。
もう一つは、見せる側の話です。ヘルプには、公開したダッシュボードはすべてプロパティと共有される、と書かれています。部署ごとに違うダッシュボードを見せ分ける、といった使い方は、いまの記載からは読み取れません。公開は全員に対して行うものだと考えて、名前の付け方や、誰が作って誰が見直すのかを先に決めておくほうが、あとから整理する手間が小さくなります。
いまは対応していないことを先に確認する
ヘルプには、対応していない機能も明記されています。APIでの取得、セグメント、カード単位での比較の三つです。
この三つは、そのまま使いどころの線引きになります。APIに対応していないということは、ダッシュボードの中身を別の場所へ自動で渡す経路がないということです。毎週決まった時刻に関係者へ配布する、社内のBIへ取り込む、といった運用は、これまでの方法を残すことになります。KPIを定期的に届ける形にする手順はKPIレポートの作り方で扱っています。
セグメントとカード単位の比較に対応していないことも、設計に効きます。新規と再訪、デバイス別、流入元別といった切り口で同じ指標を並べたい場合、いまはカードを分けて作ることになります。標準のプロパティではカードが15枚までなので、切り口を増やすほど枠を使います。載せる指標を絞る作業が、そのまま設計になると考えたほうが実際に近いはずです。
日本の実務者がいま決められること
日本語の画面にいつ出てくるかを待つ間にも、決めておけることがあります。
最初に決めるのは、一枚に載せる指標です。カードの上限は制約ですが、絞る理由にもなります。会議で毎回説明している数字と、参照だけして終わる数字を分けて、前者だけを並べると枚数はおおむね収まります。数字の選び方に迷う場合は、指標そのものの定義から確かめるのが近道です。何をどう数えている指標なのかはアクセス解析で見る指標の選び方で整理しています。
次に、公開の運用です。公開すればプロパティの全員に見えるため、似たようなダッシュボードが増えると、どれが現行なのか分からなくなります。作る人を決める、名前の付け方を決める、見直す時期を決める。この三つを先に決めておくと、あとから整理する作業が要らなくなります。
三つ目は、役割の棚卸しです。編集者以上でなければ作れないという条件は、権限を配り直す理由になります。同時に、退職者や異動した人の権限が残っていないかを見る機会でもあります。これはダッシュボードを使うかどうかに関係なく意味のある作業です。
四つ目は、いまの配布方法との併存です。ダッシュボードが増えても、APIでの取得ができない以上、外部へ渡す経路は別に残ります。置き換えを前提にせず、社内で見る面と、外へ届ける面を分けて考えるほうが無理がありません。なお、これらの準備が成果につながるかどうかは、扱う指標と運用のしかたによります。機能そのものが結果を保証するものではありません。
記載を確認できなかったこと
確認できなかったことを残します。提供が始まる地域や段階的な展開の順番、日本語の画面での名称、モバイルアプリでの表示については、今回確認したヘルプに記載がありませんでした。
ダッシュボードをプロパティごとにいくつまで作れるかについても、カードの上限は書かれている一方で、ダッシュボード自体の数の上限は確認できませんでした。公開を取り消す操作や削除の手順、APIやセグメントへ対応する時期についても、記載を見つけられていません。導入した企業の数や、作業時間がどれだけ減ったかといった数値も公表されていないため、効果の大きさをこの発表から測ることはできません。
出典と注記
この記事は、Googleアナリティクスの公式ヘルプ(更新履歴、ダッシュボード、探索、ユーザーの役割、レポートのカスタマイズの各解説ページ)を出典としています。いずれもプラットフォームが自ら公開している一次情報です。数値は原文の表記に沿っており、単位の換算はしていません。仕様は改定されるため、実際に設定する前には各ページの現在の記載を確認してください。確認日は2026年9月14日です。
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