AdSenseとGoogle Ad Managerのレポートに並んでいる表示回数は、2027年2月17日を境に、いまと同じ条件で数えた数字ではなくなります。Googleはディスプレイ広告の表示回数の数え方を、広告のダウンロードが始まった時点で数えるcount-on-download(COD)から、ユーザーの端末で描画が始まった時点で数えるbegin-to-render(BTR)へ切り替えると、Ad Managerの公式ヘルプで案内しています。ヘルプには操作は不要と書かれています。ただし、レポートに出る数字のほうは動きます。
先に結論を書きます。広告の売り方や配信そのものが変わるのではなく、同じ配信を数える位置が工程の後ろへ移ります。ダウンロードは始まったのに描画まで進まなかった広告が、切り替え後は表示回数に入りません。数が減れば、表示回数を分母に置いている単価の指標も見え方が変わります。この記事では、Ad Managerの公式ヘルプ2件と、Google Publisher Tagの公式リファレンスの範囲だけで、変更の対象、減る理由、切り替え前に自分で測れることを整理します。数値は原文の表記のまま扱い、単位の換算はしていません。確認日は2026年9月4日です。
何が変わるのか
ヘルプの説明では、BTRは広告クリエイティブが正常に読み込まれ、ユーザーの端末で描画を開始した時点で表示回数を数える方式です。いまのCODは、広告が端末へダウンロードされ始めた段階で数えています。差はごくわずかな時間ですが、その間に起きたことの扱いが変わります。ダウンロードが始まっただけで終わった広告は、CODでは1回、BTRでは0回になります。
移行日は2027年2月17日です。対象はGoogle Ad ManagerとAdSenseのディスプレイ在庫で、ウェブ、モバイルウェブ、コネクテッドTVのバナーが含まれます。公開側での設定変更は求められていません。
Googleが挙げている利点は3つです。IABのガイドラインに沿った業界標準の方式であること、CODのために必要だったバッファリングの手当てがなくなり、公開側の作業が単純になること、そして需要側のプラットフォームが行っている計測と揃うことです。3つめは実務に直接効きます。広告主や第三者計測の側は、すでに描画を基準に数えていることが多く、そこで生じていた食い違いを縮めるための変更だと説明されています。ヘルプには、Ad ManagerがディスプレイとビデオとリッチメディアでMRCの認定を維持していることも併記されています。
これから変わる在庫と、すでに変わっている在庫
ヘルプは、在庫の種類ごとに現在の方式と切り替え後の方式を並べています。
| 在庫の種類 | いまの数え方 | 2027年2月17日から |
|---|---|---|
| ディスプレイ:バナー(デスクトップ・モバイルウェブ・CTV) | COD | BTR |
| ディスプレイ:バナー以外(ネイティブ、インタースティシャル) | BTRに準拠 | BTR |
| アプリ | 1ピクセル方式(BTRに準拠) | 変更なし |
| 動画 | 最初のフレーム(BTRに準拠) | 変更なし |
今回動くのはディスプレイのバナーだけです。ネイティブやインタースティシャル、アプリ、動画は、すでに描画を確認してから数える方式になっています。したがって「すべての指標が一律に下がる」という読み方は正確ではありません。自社の在庫のうち、どれだけがウェブとモバイルウェブのバナーで占められているかによって、影響の大きさは変わります。
なぜ表示回数が減るのか
ヘルプは、切り替え後にディスプレイの表示回数の合計が減る場合があると明記しています。理由も同じ文に書かれていて、BTRのほうが広告配信の工程の後ろで数えるからです。
減るのは、ダウンロードは始まったのに描画に至らなかった分です。読み込みの途中でユーザーがページを離れる、次のページへ移動する、といった動きがそのまま該当します。表示領域からかなり手前で広告を取得している場合も同じで、取得は済んだが画面に近づく前に離脱すれば、その枠は数えられません。ヘルプはあわせて、ネットワークやリソースの消費が過大な広告をChromeが無効化することにも触れ、クリエイティブを軽くして読み込みと描画が滞りなく進むようにすることを勧めています。
ビューアブルインプレッションとは別の話
ここで混同しやすいのが、ビューアブルインプレッションとの関係です。BTRは「描画が始まったか」を見る方式で、「ユーザーに見える位置にあったか」は問いません。
見える位置にあったかを扱うのは、Ad ManagerのActive Viewです。ヘルプによれば、標準的なサイズのディスプレイ広告では、広告のピクセルの50%が1秒以上続けてブラウザの表示領域に入っていることがビューアブルの条件です。242,000ピクセルを超える大きな広告では30%、インストリーム動画では50%が2秒以上とされています。Active ViewはIABの基準を引いてこの条件を説明しています。
つまり、数え方は厳しさの違う3段になります。ダウンロードの開始で数えるCOD、描画の開始で数えるBTR、見えた状態が続いたことまで求めるビューアブルです。今回の変更で動くのは1段目から2段目への移動であり、3段目は別の指標として並行して残ります。
切り替え前に、自分で差を測れる
この変更のよいところは、影響の大きさを当日まで待たずに測れることです。Ad Managerのレポートには、いまの方式で数えた指標とは別に、描画を基準にした指標が用意されています。ヘルプは、レポートで「Ad server impressions」と「Ad server begin to render impressions」を並べ、その差を見ることでCODとBTRの違いを見積もれると案内しています。切り替え後に初めて気づくのではなく、いまの配信のまま差分を出せます。
ヘルプが挙げている備えは、大きく3つです。1つめは、広告主や第三者計測の側のレポートと自社の数字を突き合わせ、食い違いの状況を確認しておくこと。2つめは、クリエイティブのアセットを整理し、ダウンロードと描画が効率よく進むようにすること。3つめが、遅延読み込みの設定の見直しです。
3つめは補足が要ります。Google Publisher Tagの公式リファレンスでは、遅延読み込みの余白を2つの値で指定します。fetchMarginPercentは、枠が表示領域からどれだけ手前にある時点で広告を取得するかを、表示領域の大きさに対する割合で決める値です。renderMarginPercentは、同じ考え方で、どれだけ手前で描画を始めるかを決めます。モバイルでは、mobileScalingで余白に倍率をかけられます。取得の余白を広く、描画の余白を狭く取っている構成ほど、取得だけ済んで描画に至らない枠が生まれやすくなります。これはCODの下では表示回数として数えられていた部分です。
日本の実務者はどう備えるか
やることは、設定変更よりも先に、数字の読み方の合意です。
第一に、前後比較に断層ができます。2027年2月17日をまたいだ前年同月比や前月比で表示回数が下がっても、それが人の減少なのか数え方の変更なのかは、数字だけでは分かりません。切り替え日を注記としてレポートに残しておくのが、いちばん安価な対策です。定義の変更で数字が動く事例は珍しくなく、当サイトでもMerchant Centerの成果レポートの定義変更を扱っています。
第二に、社外へ表示回数を報告している場合です。媒体資料に掲載している月間の表示回数や、広告主への実績報告は、同じ在庫でも切り替え後は小さく出る可能性があります。数字が動いてから説明するより、先に定義の変更を共有しておくほうが、話が早く済みます。
第三に、単価の指標です。表示回数を分母に置くRPMやCPMは、分母が小さくなれば同じ収益でも大きく見えます。収益そのものが変わるとはヘルプに書かれていません。指標の上下を、そのまま成果の上下として受け取らないことが要ります。
第四に、遅延読み込みの余白です。取得の余白を極端に広く取っている場合は、この機会に自社の設定値を確認しておく価値があります。ただし、余白を狭めれば表示回数が戻るというものではありません。取得を遅らせれば、表示までの時間や埋まり方にも影響します。効果は構成と読者の動きによって変わるため、変更するなら差分を測りながら進めてください。海外のプラットフォームの動きは海外マーケティング最前線でも継続して扱っています。
公表されていないこと
確認できなかった項目を残します。減少幅の目安は、どのヘルプにも書かれていません。地域別、在庫別、デバイス別の内訳もありません。移行が一斉なのか段階的なのかについても、日付以外の記載はありません。AdSense側だけを対象にした個別のヘルプ記事は見つからず、案内はAd Managerのヘルプに集約されています。
Active Viewのビューアブルの条件が今回の変更で見直されるかどうかについても、記載はありません。この記事では、両者は別の指標として並行して残るものとして扱っています。
出典と注記
この記事は、Google Ad Managerのヘルプ「Begin-to-render impression counting for display ads」と「Active View overview」、およびGoogle Publisher Tagの公式リファレンスを出典としています。日付・割合・指標名は原文の表記のまま記載し、換算はしていません。効果や収益の増減を約束する記述は含みません。確認日は2026年9月4日です。
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